来年1月に日本公開予定のホラー映画『ペットセメタリー (Pet Sematary, 2019)』。

死者が蘇る墓地。

しかし蘇った死者は邪悪な気を纏う…。

今も根強いファンが居る、スティーブン・キングが1983年に発表した長編小説を映画化した本作品。

1989年にも映画化されているので、今回は30年ぶりにリメイクされ、アメリカで2019年4月に公開レました。

かつて原作は「あまりの恐ろしさに発表を見合わせている」と噂されていた作品。

ホラー色の強い作品ですが、主題は“愛するが故に、呪いの力を借りてまでも死んだ家族を生き返らせようとしてしまう”という「人間愛・家族愛の哀しさ、人間の愚かさ」といった点。

その中身をご紹介致します。

pet sematary

原題の「Pet Sematary」は「ペット霊園」の意味ですが、霊園の正しいスペルは「Cemetery」。

これは、作中に登場するペット霊園の入り口には、幼い子供の書いた看板がかかっており、子供らしいスペルミスをした為…という設定の為です。

日本でのタイトルは『ペット・セメタリー』として以前も公開されています。

リメイク版には主演のルイス役に『猿の惑星:新世紀』のジェーソン・クラーク、その妻のレイチェル役には『エイリアン:コヴェナント』のエーミー・サイメッツ、一家の隣人であり、禁断の土地への案内人・ジャドを演じるのは『インターステラー』の名優ジョン・リスゴーが名を連ねます。

都会から離れた小さな町に古くから伝わる動物墓地。その奥には、決して埋葬してはいけない超自然的な力が宿るもう一つの墓地が…。

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ペット・セメタリーあらすじ

ボストンで医者をしていたルイス・グリードは小さな町に妻のレイチェルと娘のエリー、息子のゲージとともに引っ越してくる。

そこで家族は静かでのどかな田舎生活を始めるつもりだった。

ある日、娘のエリーは家の敷地内にある森の中に近所の子供たちが死んだ犬を連れて入っていくのを目撃する。

そこはペットセメタリーと呼ばれ、地元の住人にペットの墓場として利用されていた。

エリーがペットセメタリーに呼び寄せられるように入っていくと、そこで隣人のジャドど出会う。

ジャドはエリーと母親のレイチェルにこの森は危険だ、と忠告する。

一方、大学病院で働き始めたルイスは、自動車にひかれた学生を救出しようと応急処置にあたっていた。

しかし努力もむなしく、学生は息を引き取ってしまう。

その晩、ルイスは夢の中で同じ学生の声を聴き、ペットセメタリーに足を踏み入れる。

すると、学生が姿を現し、彼の腕をつかもうとするのだった。悪夢から目を覚ましたルイスの足はなぜか泥で汚れていた。

別の日、ルイスたち家族は家でハロウィンパーティーを開いていた。

すると、隣人のジャドがルイスのペットであるチャーチの死体を道路で発見する。

チャーチはトラックにひかれて死んだらしかった。

ルイスはチャーチのことが大好きな娘エリーのためにチャーチが死んだことは内緒にしておこうと決めた。

そしてジャドの協力を受けて、ペットセメタリーに埋めることにした。

すると、あろうことか死んだはずのチャーチが翌日になると、生き返っていたのだった…

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「アレは別の生き物だ」と不吉な言葉を皮切りに、不気味な覆面を被った子供たちや、変わり果ててしまった娘、恐怖映像が畳みかけてきます。

愛する者を取り戻すため、禁忌を犯してしまったルイスに、降りかかる想像を絶する恐怖と悲劇とは…? 

1989年版とのペットセメタリーの違い

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1989年のオリジナル版との違いはあるのでしょうか?ここからは少々ネタバレを含むのでご注意を。

前回の『ペットセメタリー』と本作が大きく違う大きな点は、まず事故で死亡するのが幼い長男・ゲイジではなく長女のエリーという所。

そして蘇ったゲイジは直ぐに凶行に走りますが、2019年版では父・ルイスが墓から泥だらけで帰った娘をお風呂に入れます。

ルイスが束の間の幸せを感じる場面を織り込んだことは、残された家族の心情を汲み取る演出であり、オリジナルのものよりももっと人間味に寄り添った構成である事がが伺えるでしょう。

また、エリーが隣人・ジャドを殺害しに現れた際、無理矢理に戻されて苦しいと訴えるのですが、このことからジャドを殺害する動機がルイスに秘密の場所を教えたことだと明確にしています。

これは、今回の『ペットセメタリー』が単なるホラーに留まらず、正面から死生観を捉えているというポイントです。

大切な人を亡くした後の喪失感というのは、理性や常識では説明できない感情に飲みこまれるもので、失った娘に会いたいと望む父親の気持ちは、誰もが理解できるのでは。

もし、あなたが失った愛する人を生き返らせ、もう一度抱きしめることが出来る方法を知っていたとしたら…?

作品内の蘇る死者は、見た目は同じでも生前とは全く別の人格。

生きている者の勝手で現世に呼び戻したとしても、それは死者にとっても生きているものにとっても、幸せな事とは限らないのです。

本当に怖いのは、亡霊でも生き返った死者でも無く、モラルや良識を捨てる人間の心なんですね。

自分の愛する人が生き返る、、、それだけ聞くとラブストーリーなどに多そうな展開ですが、まさかのホラーになってしまうとは。

そこへ突き動かす喪失感の力をまざまざと見せる本作は、“死”を軽んじて描くことなく自然の摂理として受け入れる”難しさ”を暗示する大人の映画なのです。

死は避けられない運命で、それに抗うと必ずしっぺ返しを食うもの。そんな人間の弱さに付け込んだおもしろい作品。

2020年1月17日(金)に日本公開です!