若き海上保安官たちが厳しい訓練を積み、人命救助のエキスパートである潜水士として成長していく姿を描いた青春劇、『海猿』。原作は「週刊ヤングサンデー」に連載された、作者:佐藤秀峰、原案・取材:小森陽一による漫画です。

漫画は1999年より連載され2001年に完結し、2004年に羽住英一郎監督によって映画化・そしてテレビドラマ化。さらに続編が3作公開され、大ヒットを記録しました。

キャッチコピーには”ついに最終章”、”シリーズ完結編”と付けながらも終わらず続いた作品。

最終作には次回の予告編まで公開され、終わらない様に見せかけてたのに終わってしまったのはなぜ…⁈ 時系列ごとに、裏話と共に振り返っていきます。

umizaru

単発ドラマの『海猿』

海猿の主人公と言えば、伊藤英明さん!…というイメージの方が大半だと思いますが、実はその前にNHKの単発ドラマでTOKIOの国分太一さんが主人公・仙崎大輔を演じているんです。

原作に比べ、サスペンスの要素が強い内容になっています。また、どちらも舞台は鹿児島です。

各あらすじはこちら。

2002年:単発ドラマ『海猿』

海上を漂流していたプレジャーボートで、夫婦の遺体と子供が見つかった。大輔と美晴(永作博美)は「自殺」との発表に疑問を持ち、事件の真相を追う。

2003年:単発ドラマ『海猿2』

池澤(杉本哲太)が妻子と乗ったフェリーに、銃を持った強盗犯が現れる。大輔らは犯人の発砲で火災が起きたフェリーへ救出に向かう。

◾︎2004年以降の『海猿』

そして2004年公開の映画から、主人公は伊藤英明さんです!

2004年:映画『海猿 ウミザル』

キャッチコピーは「カッコつけてちゃ、命は救えない。」

umizaru

2004年6月12日に全国東宝系にて公開。海上保安庁が全面協力しました。

海猿と呼ばれる若き潜水士候補生の友情、恋、挫折、試練、成長が描かれています。ヒロインの伊沢環菜役には加藤あいさん。観客動員131万人、興行収入17.4億円を記録しました!

海猿のあらすじ

海難救助の最前線、潜水士を目指す仙崎大輔を含む14名の海上保安官が過酷な訓練に挑む。海上保安官の中でも優秀な者のみが参加できる潜水技術課程研修に参加し、工藤(伊藤淳史)とバディを組むことに。工藤に足を引っ張られてばかりだったが、彼の純粋さに共感し、協力して訓練を乗り越えていく。仙崎と工藤はいつしか訓練生たちの中心的存在となっていくのだが……。

2005年:連続ドラマ『海猿 EVOLUTION』(フジテレビ系・2005年7月〜9月)

キャッチコピーは「キミがいたから、勇気を知った。アイツがいたから、命をかけた。」 

umizaru

映画からの続編で、主要キャストは引き継いでいます。映画の舞台であった海上保安大学校にて潜水士訓練課程を卒業後、1年間現場での実務をこなし、辞令により第三管区横浜海上保安部(横浜市)所属・PL型巡視船「ながれ」に配属されるところから物語は始まります。

新たな仙崎大輔のバディとなる吉岡役に佐藤隆太さん。

2006年:映画『LIMIT OF LOVE 海猿』

キャッチコピーは「愛でしか、救えない。」

umizaru

2006年5月6日に全国東宝系にて公開。日本国内の315スクリーンで封切られ、530万人を動員、興行収入71億円の大ヒットを記録し、2006年公開の日本映画の実写映画部門では興行収入第1位となりました。映画公開以降、海上保安官の志願者数が激増したそう…!

あらすじ

鹿児島へと異動し機動救難士となった仙崎と吉岡(佐藤隆太)。仙崎は遠距離恋愛ながらも、環菜(加藤あい)と順調に交際し、結婚は目前だった。ある日、訓練中に出動が命じられる。任務は鹿児島湾内で座礁したフェリー「くろーばー号」での救助活動。しかし、予想以上の速さで浸水、傾いていく船体。仙崎と吉岡、そして要救助者2名は、絶体絶命の状況に追いやられていく…。

先行していた連続ドラマの完結編として公開された作品で「ついに最終章ー」というキャッチコピーがついていました。

実は連続ドラマの視聴率は、当時の水準からすればコケた数字となった、平均視聴率13.2%でした。そのため羽住監督は「もう誰も海猿を観てくれないのでは?」と不安になっていたそう…。しかしその中でも本作のフェリーの話だけはどうしてもやりたい、という気持ちでその不安を抑えて本作の監督を務めました。そしてその結果、興行収入71.0億円を記録する大ヒットに!そんなわけでまた続編が決まり、この『LIMIT OF LOVE 海猿』が最終章という話はなかったことに…。

2010年:映画『THE LAST MESSAGE 海猿』

キャッチコピーは「愛する人に何を残すのか──。」

umizaru

「完結編」と銘打ったこちらは興行収入80.4億円を記録!2010年の実写日本映画・第1位に輝きました。そして邦画大作史上初の3Dと2Dで同時公開されました。

こちらは原作漫画にない完全オリジナルストーリーです。

あらすじ

2010年9月、大型台風が接近する中、福岡沖に国家プロジェクトとして建設された天然ガス採掘プラント施設「レガリア」(REGALIA)で火災が発生した。仙崎は吉岡と「レガリア」設計主任の桜木(加藤雅也)とともに現場へ向かうが、救助作業中に爆発が起こり、仙崎や桜木たちは施設内に取り残されてしまう。ヘリも船も近づけない中、仙崎は知り合ったばかりの機動救難士・服部(三浦翔平)とバディを組み、全員で無事帰還する方法を探る。

しかし、予想以上の速さで浸水、傾いていく船体。仙崎と吉岡、そして要救助者2名は、絶体絶命の状況に追いやられていく…。

日本の大作映画初の3D公開に踏み切ることで新しい要素を入れて、結果的に前作を上回る興行収入80.4億円の大ヒットとなりました。

シリーズ完結編として製作され『「海猿」シリーズ完結編。』というキャッチコピーもついており、この完結編をもって長い航海に終止符が打たれるはずだったのです。しかしさまざまな思いが呼び集まり、公開直後から続編を望む声は絶えず、震災後には、1000人以上の人々が署名してメッセージを寄せた嘆願書が届けられました。

その中で監督や製作陣は本作に懸ける決意・創意も揺るぎないものとなり、再び新作が作られることとなったのです。

2012年:映画『BRAVE HEARTS 海猿-UMIZARU-』

キャッチコピーは「命をかけて、命を救う―。」

umizaru

原作コミック『海猿』の最終話で描かれている「ジャンボジェット機の海上着水」。羽住監督とプロデューサー陣は、この前代未聞の海難事故の映像化を何度も検討し、しかしそのスケールとテーマの折り合いがつかず、そのたびに断念してきました。 

また、同じく原作では仙崎大輔は特殊救難隊へ進むことになり、それは潜水士たちの最高部隊で、海難救助の「最後の砦」と呼ばれる特殊救難隊。そこで苦闘する大輔の姿を見てみたいという思いは、製作陣はもちろん、演じる伊藤英明も以前から抱いていたとのこと。

「海上着水」と「特殊救難隊」。この二つの題材を描かずしてシリーズを終えていいのか?

そのやり残したことを本作で叶えたのです。

あらすじ

世界最大級の天然ガスプラント「レガリア」の爆発事故から2年。仙崎大輔(伊藤英明)は自ら志願し、海難救助のエキスパートであり最も危険な事案に従事する「特殊救難隊」で後輩の吉岡(佐藤隆太)と共に海難現場の最前線にいた。

嶋副隊長(伊原剛志)の指導の下、日々苛烈な任務に就いていた二人だが充実した毎日を送っていた。大輔の妻・環菜(加藤あい)は2人目の子を身ごもり、吉岡にはキャビンアテンダントの美香(仲 里依紗)という恋人が出来ていたのだ。 

そんな折、美香の搭乗するジャンボ旅客機が羽田空港を目指し飛行中、エンジンが炎上し飛行が困難な状況に陥る。様々な救助案が検討される中、総合対策室の下川救難課長(時任三郎)は、夕闇が迫り視界が悪くなる状況の中で、前代未聞の東京湾への着水を提案する。しかし、海上着水に成功したとしてもジャンボが浮かんでいられる時間はわずか20分。機体が沈む前に乗客乗員346名全員を助け出す事が出来るのか!? 特救隊や現場に駆け付けた第5管区の服部(三浦翔平)たち、警察、消防、現場周辺の関係機関を巻き込んだ空前の大救出計画を、日本中が固唾を飲んで見守る中、G-WING206便の村松機長(平山浩行)は東京湾着水に向けて降下を始める…。

しかし予想だにしない事態が仙崎たちを待ち受けていたー。

原作の最終章のエピソードをベースに、基本的にオリジナルストーリーが展開されました。

内容は今までの「海猿」シリーズを否定するような姿勢で制作。過去作とは一味違う作品となり、航空パニック映画としてのクオリティも高く、シリーズ最高傑作と評されることも多かった本作。

興行収入も73.3億円と大ヒットを記録!興収8億7,822万6,350円、動員68万3,977人(公開4日間では興収15億6,357万5,650円、動員122万3,437人)になり、映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第1位を記録。

そして2012年8月25日〜9月2日には全国276劇場で同時上映・2032年公開(という設定)の架空の映画16作目『FINAL LIMIT BRAVE MESSAGE and LOVE HEARTS 海猿』の予告編が、伊藤英明さんの発案のもと本編と同時上映されました。

やっぱり海撮は終わらない!…そう私たち観客達も思い、期待していたはず。

しかし皮肉なことに、2012年10月26日、原作者である佐藤秀峰氏は自身のツイッターにて、「フジテレビがアポイントメントもなく自身の事務所に突撃取材した」ほか、「『海猿』の関連書籍が契約書なしに販売されていた」ということを理由に、フジテレビとの新規取引停止と、同作の続編制作を許可しないことを発表しました。

続編の製作許可はしないことを改めて明言し、この『BRAVE HEARTS 海猿-UMIZARU-』を最後に新作が製作されておらず、2017年10月に契約が終了したこともあり、事実上これが本当に最終作となってしまったのです。

umizaru

海上保安庁について詳しくない人はもちろん、子どもたちまで、より多くの人に、理解して映画を楽しんでもらいたいという、羽住監督のそんな思いが「海猿」シリーズの演出には込められているのだそう。

見終わって劇場を後にするときに、気持ちよく出てほしい、その想いが観客に伝わったからこその人気だったのでしょう。

2032年公開の続編が見られなかった事は残念ですが、何度でも見返したくなる映画です!

スイボナ デモについて詳しくお読みください

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *